SCIフォーラム vol.5「多文化共生〜”知る”ことから始める課題解決〜」開催!

2026年3月23日、ブラザー工業株式会社のブラザーミュージアムにて、SCIフォーラム vol.5を開催しました。 学生・企業・NPO・行政など、多様なセクターから41名が参加しました。
今回のテーマは「多文化共生」。 愛知県は、外国人居住者数・日本語指導が必要な児童生徒数ともに全国トップクラス。まさに"最前線の地域"です。
「労働力として受け入れるだけでいいのか?」 「言葉と文化を、ともに育んでいくとは何か?」
そんな問いを起点に、熱い議論が交わされました。

■ 冒頭挨拶

SCIフォーラム犬塚代表のあいさつ。
愛知はインバウンドより定住外国人が多く、多文化共生の最前線とも言える地域。「日本人ファースト」という声も理解できる一方、外国人を労働力としてだけ捉えることへの疑問もある。言葉や文化を含めてしっかり根付いてもらえる社会をどうつくるか——確固たる答えはまだないと率直に語りました。
続いて、会場をご提供いただいたブラザー工業の出原様より、2008年から18年にわたり続く「東海若手起業塾」の取り組みをご紹介いただきました。東海地区の若手社会起業家が集まるこの場所は、いまや地域起業家の"聖地"とも呼ばれているそうです。「地域の皆さんの知恵を絞り合いながら、多文化共生という社会課題にも一緒に取り組んでいきたい」とのメッセージをいただきました。
最後に、SCIフォーラム事務局代表毛受からは、ご自身のお子さんが通う小学校でのエピソードを交えながら問題提起がありました。多文化が"当たり前"になっている現場がある一方で、「労働力は欲しいが定住は困る」という矛盾した姿勢が日本語教育の整備を遅らせてきた、という現状が語られました。「今日は、皆さんで自分事として考えてほしい」との言葉でフォーラムの幕が開きました。

■ 3組のプレゼン

① 愛知県経営者協会 岩原様 「産官連携による”地域日本語教室”への支援活動」
愛知県の外国籍住民は約35万人(全国の約10%)、就労者も約23万人。そして文科省調査では、日本語指導が必要な児童生徒数が全国1位——その数は2位の神奈川県の約2倍にのぼります。知立市の小学校では、全生徒の6割が外国籍の子どもという現実もあります。
こうした現状を受け、愛知県経営者協会は2021年から取り組みをスタート。企業と行政の間には大きな"分断"があったといいます。企業は「労働環境・法令遵守・職業訓練は自分たちの仕事」、行政は「学校教育・子育て・防災は行政の仕事」と互いに相手任せにしてきた。しかし議論の末にたどり着いたのは、「日本語教育と多文化共生は、企業と行政が連携して担うべき領域だ」という結論でした。
具体的な活動として、企業からボランティアを募り、日本語教室の概要を学んだ上で地域の教室へ派遣。4年間で32社・250名以上が参加しています。参加者には、専門的な日本語の知識を持つ方だけでなく、むしろ「勉強を見てあげる」「相談に乗る」といった寄り添い型のサポートをする方が多く求められているといいます。また、参加者の層がシニア男性だけでなく、子どものころに海外で地域の人々にお世話になった経験を持つ若い女性も多く、「今度は自分が恩返しをしたい」という思いで参加しているケースも多いそうです。
プレゼンの最後には、スポーツ庁長官・河合純一氏の言葉を紹介。共生社会の実現には「知っている(Doing)→ やってみる(Doing)→ 意識しなくてもできる(Being)」という3つのステップがある——この言葉が、会場全体に深く響きました。

② 認定NPO法人プラス・エデュケート 森様 「質の高い日本語教育による成果指向の課題解決」
全国で日本語指導が必要な児童生徒は約6万9000人。愛知県はその中でも突出した数を抱え、不就学の可能性がある子どもが約1万人いるとも言われています。外国籍の子どもには義務教育の適用がないため、学校に行っているかどうかさえ確認できないケースがあるのが現実です。
森様が訴えたのは、「子どもの方が大人よりずっと過酷な環境にある」という事実でした。大人の労働者は工場などで通訳や先輩に助けられながら日本語なしでも働ける環境があります。一方、子どもたちは来日直後から日本語で1時間目から6時間目まで授業を受け続けなければならない。日常会話ができるまでに1〜2年、学習に追いつくにはさらに時間がかかる。「中学1年で来日したら、中3には間に合わない」——それが不登校や中退につながっていきます。
実際のデータも衝撃的でした。
中退率:日本人の約8倍
大学進学率:日本人の約0.6倍
非正規就職率:日本人の約12.5倍
進学も就職もしていない割合:日本人の約1.8倍
愛知県の公立高校では3200人の二次募集に対し、出願者がわずか50人という現実も紹介され、会場は大きくどよめきました。
こうした現状に対し、プラスエデュケートは豊明市の自治体と連携し、来日直後の子どもたちに3ヶ月間の集中日本語プログラムを提供。独自に開発した子ども向け教材と、300時間以上の社内研修を積んだプロ教師が毎日指導することで、わずか1.5ヶ月でも大きな変化をもたらしています。
プレゼン中に上映された映像では、来日直後は言葉が全く出なかった中東出身の男の子が、約120時間(1.5ヶ月分)の指導後に笑顔で日本語を話す姿が映し出され、会場はその変化に感動に包まれました。「これが本来のその子の姿なんです」という森様の言葉が印象的でした。
「子どもたちは日本で教育を受けると、母国語を忘れていく。だから母国にも帰れない。日本でなんとかするしかない。彼らは将来の消費者であり、労働者です。子どもへの支援に、ぜひ企業も目を向けてほしい」——会場に強く響いたメッセージでした。

③ 一般社団法人Dive.tv 牧野様 「外国ルーツであることが「強み」になり、異なる文化・社会をつなぐハブへ」
知立市・碧南市での大人向け日本語教室や、愛知県内6校ある在日ブラジル学校(ポルトガル語で授業を行う学校)への日本語授業サポート、中学生向けのボランティア教室、多文化キャンプなど、多岐にわたる活動を展開してきた牧野さん。
今回特に紹介されたのは、在日ブラジル学校の現状です。かつては「ブラジルに帰って大学進学を目指す」ことを目的とした学校でしたが、今や卒業生の80〜90%以上が日本に残ります。しかし日本の公立校からいじめを受けて転校してくる生徒も多く、日本語レベルもゼロから日本人同等まで幅広い子が混在するという難しさがあります。日本語だけを教えても、子どもたちのモチベーションは上がらない——そこで着目したのが「キャリア教育」です。
ブラジルの「人生プロジェクト」を参考にしたカリキュラムを開発。母語でのディスカッションや作文を取り入れながら、自分の強みや将来を考える機会を提供してきました。ある生徒は「私を歓迎してくれる学校で、同じ困難を持つ友達と出会えた」とポルトガル語で綴り、別の生徒は「助け合いができることが良かった」と日本語で書いてくれた——そんな子どもたちの言葉が紹介されました。
今年2月〜3月には「多文化リーダー養成講座」を5回開催。大学進学を果たした多文化ルーツの若者10人を集め、インターンシップや外国人社会人との対話を通じて自らのキャリアを考える機会を提供しました。
そして牧野さんが会場に投げかけた問いは、深いディスカッションを生みました。
「日本で育った多文化ルーツの若者は、言語力・日本文化の体得・複文化性という3つの強みを持っている。でも、それを活かせる職場がどれだけあるか? そもそも日本社会は、外国人に何を期待しているのか? それを明確にすることが、共生の第一歩なのではないか」

■ 3つの発表を通じて

共通していたのは、この言葉。
「知る → やってみる → 当たり前になる」
多文化共生は特別なことではなく、一人ひとりの小さな行動から始まる。 そのことを強く実感する時間となりました。
最後の1分間ピッチでは、建設・不動産コンサルの方によるシングルペアレント支援の取り組み、日本語教室でのボランティア実践報告、若者のキャリア支援プロジェクト、知多市での子どもの学習支援教室の活動などが次々と紹介されました。そして、イベントの前日に参加を決め飛び込んできた高校1年生なども発表し、会場は大きな拍手に包まれました。
今回も、"笑い・熱量・学び"が詰まったSCIフォーラムとなりました。
📣 次回開催決定! 6月18日(木)予定 ※会場・テーマは後日公開
【会員募集中 / 学生無料】 SCIフォーラムは、共感と共創で成り立つ場です。ぜひご参加ください👇 https://www.kaihipay.jp/forms?form_code=5307303640145278
共創の場から、新たな出会いと挑戦が生まれる。 次回もお会いできるのを楽しみにしています!